もう、2年以上の月日が流れてしまった。
最後に見た景色は今でも覚えている。
また一人になって、ここから力強く歩いていかなければいけないと思っていた。
57丁目辺り、ナイキあたりから見かけたビルと青空。
春とは言い切れないような張りつめた冬の青空。
次ここに戻ってくるのはいつだろうと考えながら、帰り道に向けて歩き出していた。
今になっても思う、New York程自分に刺激を与えた場所はないと。
香港も、シンガポールも、パリも魅力的であるのだが何かが違う。
あんなに、空を、上を見上げた街はNew Yorkしかない。
人は、新しい場所に進んで行く時、知らない環境に足を踏み入れた時は上を向いている。
緊張から目の前のことしかわからない時もあるかもしれないが、足元だけを見ていては何かを見つけることはできない。
思わず、驚きから声を漏らしてしまった体験を思い出してみてほしい。
それは、新しいショッピングモールかもしれないし、登りきった山からの景色かもしれない。
上だけではなくて、目の前に広大な空間が広がっていることに人は驚きを感じる。
同じように、深さを目の前のことに見いだすことのできる人もいるが、それは長い時間と成熟した感覚のようなものがなければならない。
否応無しに、上を見続けさせる街、驚きを与え続ける街が私にとってのNew Yorkだった。
刺激に溢れている街。
一つ一つの通りを私は歩き回った。
もう全ての通りを歩いたのではないかと思っても、私の足が止まることはなかった。
高いビルがある場所は世界にもたくさんある。
様々な文化を持つ人が集まっている場所だってある。
最初にManhattanを訪れたのが夏の真っ盛りで、最後が冬の終わり。
あのイメージは今でも決して消えることはない。
あの景色だけは、記憶に焼き付けておこうと写真を撮らなかった。