Carpe Diem

Think good thought.

I’ve just seen a faceを弾く女性

 

 タイトルは女性じゃなくて女の子の方が良かったかもしれない。もちろんThe Beatlesの曲。個人的にとても好きだったし今も好きだ。The Beatles自体が好きだったし、彼らの曲はもちろん好きだし、彼らに関わることが少しでもあるなら興味を持ってひどいときにはどんな些細なことも好きになってしまうそうだった時期の話。いろんな話をこれまでしてきたし、特に彼女には何でも話してきたけどこの話はしていなかった、というような話。

 その人は、帰り道に言った。夏の夜。五車線以上はあるだろうかという通りの歩道を歩いていた。残念ながらと言ってはおかしいかもしれないけど、その人と二人切りという訳ではなかった。風はほとんど吹いていなかったけど涼しくて気持ちよかった。空は真っ黒。夜中なのに世界一明るい場所から通りを一本はずれたから余計暗く感じたのかもしれない。あの頃はまだ若かった。それはシルクドソレイユを見た帰り道だった。The Beatles “LOVE”。そのころはまだすべての曲を知らなかった。わからない曲が一、二曲だけあったと僕は言った。そしてその女性はギターが好きだった。いろんな曲を弾くことが出来ると言った。その頃はまだ、うまい返しができなかった。うまい冗談も、下手な冗談も緊張して言えなかったしまだまだ真っ直ぐ会話をしていた方が楽な時期だった。

 彼女はOctopus Garden弾けると言った。それで、好きになりかけた。いや、きっと好きになっていたと思う。タイトルを聞けば、メロディーがわかる。そして頭の中に流れてくる。その場にいた僕と彼女以外は何の話かわかっていないようだった。イントロが頭の中に流れていた。特徴的だと思う。「今度弾いてよ」そんなことをその時は言ったような気がする。本当にそう思っていたけど、その程度のことしか言えなかった。けど、中々返事の難しい発言であるとも思う。その時僕はOctopus Gardenを弾けると言う素敵な女の子に、ちょっと自慢げな表情に向かって素敵な返事を差出せる余裕はなかった。今でも出来ないかもしれない。とっても素敵な会話だったとは思う。

 今後会うかはわからないけど、I’ve just seen a faceを弾ける人に出会ったら間違いなく恋に落ちてしまうと思う。その会話に、そして実際の演奏に。個人的な喜びのようなものを共有できる人は意外と少ない。その曲がナンであろうともそのような出会いには感謝するべきだしその人を大切にするべきだと少しの教訓をこの会話と経験からは学んだ気もする。