Carpe Diem

Think good thought.

覚えていることと、忘れること

 

 今日の夕方から天気が回復してきた。雨が降っていたのがやんで、日が沈む頃には夕日とそれに染まった少しの青空を見られるまでになった。青空がとても美しかった。青空という言葉で表現が正しいのかはわからない。今日は空の水色がどんなに美しいかということに気づかされた。青ではなくて水色。雲と空が溶け合う場所は本当に美しくて言葉で表現しようとするすべての人間を諦めさせるのに十分な程。美しい。こんなに美しい水色があって、それを自分が見られるということがどれほど幸せなのかと思った。本当にその瞬間自分は仕合せだったし、誰かとこの景色を共有したいと思った。何度もカメラで写してみたが、見たままの景色を保存することは出来なかった。「こんなに青い空を見たことがない」という有名な表現があるが、こんなに美しい水色を、自分は見たことがなかった。

 けど、そこで思った。過去にもこのような水色を見たことがあるのではないか。実際そんなことはないと思う。あったらもう少し違う感じ方をするという自身がある。自分にしかわからないことなのだが。

 それよりも思ったことは、覚えていることと忘れること。今日、この空を見て最近は自然の美しさを感じられる程心に余裕がないのかなと思った。そして去年の今頃自分は空を見ていただろうか、何をしていたのだろうかと何気なく思ったのだが何も思い出せなかった。これは自分としては珍しいこと。去年の今頃、自分が何を思って何に時間を割いていたかを確認するには手帳を開くしかない。

 はっきりと覚えている景色はいくつもある。景色そのものを記憶している場合もあるし、そのときの感情を正確に思い出すことも出来る。美しい空や湖。光の加減やそのときの胸を締め付けられる苦しみ。思い出す時々によってその記憶は全く同じで変化しているかもしれない。けど、そのイメージのようなものは思い出すことが出来る種類のものだしそのように自分で信じている。

 そして、忘れてしまった出来事や風景。行った、見たことは確実なのに何も覚えていない。再びそこに行ったときにはっとする。初めて見たような感覚に襲われ、その美しさを認識するからだ。一度見たことがあるはずにも関わらず。

 覚えているから、今目の前の景色が綺麗に見えるのか。それとも忘れるからまた感動することが出来るのか。どちらの場合もあるだろう。目の前の景色は常に美しいのかもしれない。