Carpe Diem

Think good thought.

移動と手段と

 

 ある年齢に達すると、あることが出来るようになる。世の中にはどちらかを選んだらどちらかは選択できなくなるということがあるけど、そうでないものもある。

 車を運転できるようになるのもある年齢を過ぎてから。そこから自分の世界がどんどん広がっていく。旅行、引っ越し、散歩、仕事にしても移動は常に付いて回る。時には移動すること自体が目的にもなる。ある目的のために嫌々ながらしょうがなく長い距離を移動する機会も少なくない。

 それぞれの移動手段の特徴は異なる。常に歩いて移動するのを好む人。歩くのは人間にとって一番なじみ深い行動なのではないか。もちろん移動手段は発達したしほとんど動かなくても日常生活の大半のことをこなすことが可能な時代ではあるが。歩いていると自分の周りの景色をゆっくりと見ることが出来る。歩いていて気になるものが見つかればふと止まってじっくり観察できる気ままさもある。長距離を歩くことに抵抗がない人は楽しみをもって移動し続けることが出来る。一度に長い距離を、そして早く移動することは出来ないかもしれないが自分のペースでしっかりと歩くことが出来る。そう、誰にも邪魔されない、自分だけのペースで歩かなければいけないのだ。

 電車や新幹線。それぞれの種類によってスピードや停車の回数は異なるが長距離を移動することが出来る。そして、普段見ることのない目線で周りの風景を楽しむことが出来る。基本的に、電車は真っ直ぐ進んでいく。電車だけの道が用意されているから。その真っ直ぐな道に対して景色が流れていく。時にゆっくり、時にはもっとゆっくり景色を楽しみたかったと思わせる程高速に。電車は、目的地が決まっている。途中下車をすることは出来るがその移動の最中に止まることは出来ない。

 そして車。好きな場所に好きな速度で移動できる手段なのではないかと思う。他の車や他の人にペースを合わせる必要はあるが田舎や夜の道ではその必要もない。自分の見たいような景色見たいように見られる。遠くまで行けるし、山奥も海沿いも細い道も問題なく通ることが出来る。音楽も聞く事が出来るし他人に運転を任せれば景色も独り占めである。

 車を運転することは、歩くことをやめることでも電車に乗れない、ならないということではないかもしれない。ある歳になって自分の好きな交通手段を使えるようになったとしたら、それを使わない理由はどこにあるだろうか。